PNC会員へ・・・

会員のみなさま 1538                   後醍院 廣幸
 
おはようございます。本日は2021年10月16日(土)、現在は朝の6時半です。
 
 本日は一日中曇りで明日は雨模様、気温もぐっと下がって来るようです。
いよいよ秋深しの言葉が当てはまる季節になって来たようです。
 
 コロナ感染も順調に減少傾向、昨日の都は57人、大阪でも65人です。
全国で見ても531人と少な目です。このまま減少して行ってついにはコロナ
ウイルス消滅…となってほしいものですが、難しいでしょうか?
 
 本日はコロナや疾病に関する記事を3点ほど付けますのでご参考にしてください。
週末の御三方のコラム(日刊ゲンダイ掲載)などは明日にします。
 
 
 ①脂質異常症
 
 
 
気づかないうちに進行し、大病につながる「脂質異常症」 予防のポイント
 
新型コロナウイルス感染症では、命に関わる病気として「肺炎」と並び「血栓症」に警鐘が鳴らされています。 血栓症は、血のかたまりが血管に詰まり、脳梗塞心筋梗塞などを引き起こすものです。そのリスクを高めるのが生活習慣病のひとつ「脂質異常症」。 「コロナ禍で外出は控えるけれど、美味しいものを食べたい」と思うのも無理はありません。しかし“美味しいもの”には脂質を含むものが多く、外出控えのコロナ太りも気になります。健康診断も延期になるなど、隠れた脂質異常症に注意が必要です。
 
血管内に脂肪を蓄積し、静かに進行する脂質異常症
 
脂質異常症高脂血症)の診断基準(空腹時採血)
脂質異常症は、血液中の脂質(脂肪)が多くなる病気です。悪玉「L D Lコレステロール」の多過ぎ、「トリグリセライド(中性脂肪)」の多過ぎ、善玉「H D Lコレステロール」は少な過ぎる、というアンバランスな状態です。
 
初期には自覚症状はありません。放置していると、気がつかないうちに血管の内側に余分な脂肪がこびりつき、ドロドロの粥状のかたまり“プラーク”ができます。すると血管は硬く弾力がなくなる“動脈硬化”という状態になり、もろく、切れたり詰まったりしやすくなすのです。
さらに、プラークが破れると、そこに血のかたまり“血栓”ができます。血栓が、詰まりやすくなった血管をふさぐと血流が止まり、その先の組織や臓器は死んでしまいます。脳の血管が詰まれば脳梗塞、心臓の血管が詰まれば心筋梗塞が起こります。
 
健康診断で血中脂質検査の結果が「要指導」や「要治療」になっていたら、脂質の状態に異変がある可能性があります。早めに医療機関を受診することをお勧めします。
 
予防・改善のポイントは“食事”と“生活習慣”
脂質異常症の予防や改善の目標は、余分な脂肪でドロドロになった血液を脂質検査の基準内におさめ、血液がスムーズに流れるようにすることです。下記の食事や生活習慣のポイントをおさえて、改善を図りましょう。
 
【食事のポイント】
・ゆっくり食べて腹八分目
・バランス良く、主食も適量食べる
・夕食はカロリー控えめ、夜食は食べない
・動物性脂肪は控えめ(肉類の脂身、バターなど)
・青魚は多め(サバ、イワシ、サンマなど)
・植物性タンパク質をたっぷり(大豆、大豆製品など)
・食物繊維をたっぷり(野菜類、根菜類、キノコ類、豆類、海藻類など)
・ビタミン類が多い緑黄色野菜を毎日食べる(ニンジン、カボチャ、トマト、ピーマンなど)
コレステロールが多い食品は食べ過ぎない(鶏卵、イクラなどの魚卵、ウナギなど)
酒類を飲み過ぎない(1日にビールなら大瓶1本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯まで)
・週に1日は飲酒しない休肝日を作る
 
【生活習慣のポイント】
・禁煙する
・ストレスをためない
・睡眠を十分とる
・適正体重を保つ
・適度な運動をする
 
適度な運動と座り過ぎに注意することが予防・改善に
運動不足は肥満につながり、脂質異常症を招きます。運動習慣のなかった人は、まず1日10分程度の運動から始めます。
 
ジョギングやスイミング、サイクリングなど、継続して動くことで体に酸素を取り入れる“有酸素運動”が効果的ですが、誰でもできるウォーキングがお勧め。通勤通学時にひと駅手前で降りて歩く。エレベーターやエスカレーターより階段を使う。買い物の時は自転車をやめて歩く、などあえて時間を作らなくても、ちょっとした工夫で自然に歩数は増やせます。加えて、テレビを見ながら筋力トレーニングやストレッチ体操をするなど、毎日の運動時間が合わせて30分以上になれば理想的です。
 
運動とともに気をつけたいのは座り過ぎ。座る時間が1日5時間以上になると、男性は最大 37.7%、女性は最大 25.2%も脂質異常症が増えるという研究が発表されています(京都府立医科大学 日本多施設共同コーホート研究)。
 
また、シドニー大学などオーストラリアの研究機関によると、日本人成人が平日に座る平均時間は世界最長の7時間とも。コロナ禍で外出機会が減り、座る時間は一層増えたはずです。立ち、歩き、体を動かすことが何より脂質異常症予防・改善には欠かせないのです。
 
 
 ②
 
  
 がんを尿で診断
 
 
 
 
 
がんの有無を1滴の尿で診断、「線虫検査」ががん治療を変える5つの理由
 
HIROTSUバイオサイエンスの広津崇亮社長(左)と、大阪大学大学院医学系研究科の石井秀始特任教授(右) 写真:HIROTSUバイオサイエンス提供
 最も生存率が低いがんといわれる、膵臓(すいぞう)がん。早期発見が困難であることも知られている。そうした中、大阪大学大学院医学系研究科の石井秀始特任教授とベンチャー企業、HIROTSUバイオサイエンスは共同研究を行い、世界初の線虫嗅覚によるがん検査を応用した早期膵がんの診断法で、従来の腫瘍マーカーによる検査よりも高い精度でがんの有無を診断できることが明らかになった。線虫検査には現在のがん検査、そして治療のあり方を大きく変える可能性がある。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
 
● 見つけるのが難しい膵臓がんを 60%の感度で早期発見
 
 あらゆるがんの中でも膵臓がん(膵がん)は、最も生存率が低いことで知られている。治癒が見込める唯一の治療法は手術だが、手術できた場合(ステージ1・2)の5年生存率はおよそ10~30%。転移はないものの手術できない(ステージ3)場合の1年生存率は30~50%、転移があるため手術ができない(ステージ4)場合の1年生存率は10~30%程度しかない(がん研有明病院ウェブサイトより)。
 
 元横綱千代の富士九重親方)も、プロ野球チーム・東北楽天ゴールデンイーグルスの監督などを務めた星野仙一氏も、膵臓がんで命を落とした。
 
 「膵臓がんは予後が悪いがんの代表格です。昨今の研究により、いろいろながんで予後は改善していますが、膵がんだけはこの30年間、依然として5年生存率は下に張り付いたままです。見つかったときに早期であることはなかなかなく、ほとんどの場合は進行がんになっていることが多いのが理由です。早期がんで見つかる割合は1割前後しかありません。今後、生存率を高めていくためには、早期の段階で見つける技術の開発が重要です」
 
 そう語るのは、大阪大学大学院医学系研究科の石井秀始特任教授(常勤/疾患データサイエンス学)だ。石井氏を中心とした研究グループは、線虫がん検査「N-NOSE(エヌノーズ)」の技術を有するベンチャー企業、HIROTSUバイオサイエンスと世界初の線虫嗅覚によるがん検査を応用した早期膵がんの診断法に関する共同研究を実施。その研究成果が米国科学誌『Oncotarget』に掲載されたことを受け、9月6日、都内で記者発表を行った。
 
 「膵臓がんでは従来、超音波やCTなどの画像診断、CEACA19-9などの腫瘍マーカーでの診断に保険診療が適用されていますが、膵臓は背中側の超音波が届きにくい場所にあるため、超音波検査で見つけるのは困難です。また、腫瘍マーカーでは、早期での陽性率が低く、スクリーニングには不適という問題があります。
 
 『N-NOSE』は線虫の嗅覚シグナルの行動応答を活用し、寒天プレートの中央に線虫、片側に採取した尿を置き、線虫がどちら側に動くのかによってがんの可能性を調べる生物診断です。当初は人の手で行われていましたが、現在検査解析プロセスは完全自動化されており、精度の高いデータが蓄積されていることから、膵臓がんの早期発見が可能になると期待しました」(石井氏)
 
がんの生物診断といえば以前、人間の100万~1億倍ともいわれる嗅覚でがんを早期発見する「がん探知犬」が注目されたことがあったが、犬ががんをかぎ分ける能力には個体差がある上に、大量の検体を安定的に解析させるのは難しいといった理由で研究はあまり進んでいない。
 
 一方、線虫がん検査は、生物学者であり、東京大学大学院時代から20年以上にわたり線虫の嗅覚に関する研究に従事していたHIROTSUバイオサイエンスの広津崇亮社長が開発した。2016年、九州大学助教を務めていた頃に「線虫は、通常の検査では発見しづらいステージ0のがんの有無までも、わずか一滴の尿からかぎ分けられる」と発表した論文は、世界を驚嘆させた。
 
 ただ、多くの人にとって、「賢い犬ならともかく、線虫でがんを見つけられるなんて信じ難い」というのが本音ではないだろうか。それだけに、今回の石井氏らの研究は、そうした疑いを晴らす格好のチャンスとなったように思う。
 
 「ヒトの尿を用いて線虫による検査を行い、手術を行う前と行った後で比較したところ、全膵臓がんで80%程度、早期でも60%程度の感度が示されました。これは従来行われている腫瘍マーカーによる検査よりも格段に良い感度です」(石井氏)
 
● がん患者の尿をかぎ分ける!? 「線虫」を活用する検査
 
 ここで改めて「N-NOSE」について説明したい。特徴は何より「線虫」という生物を利用することだ。線虫の名前は「シー・エレガンス」。「きれいなサインカーブを描きながら動く姿がエレガント」であることから、このように名付けられたという。
 
【線虫(野生型)の特徴】
●体長は約1ミリ、色は白。目視可能だがあまりにも小さく、粉のように見える。
●活発に活動する気温は23℃。それ以上寒かったり、暑かったりすると動きが鈍る。
●最適な条件下では、プレート上の尿のある場所まで、およそ10分で移動できる。
●好物は大腸菌。寒天培地上で大腸菌をエサにして成長。ゆえにエサ代はすこぶる安価。
●嗅覚が優れている。人間の約3倍、犬の約1.5倍の嗅覚受容体を持っている。
●「がん患者の尿に誘引され、健常者の尿は忌避する」性質を持つため、がんの有無を見分けるのに役立つ。今回の研究で、膵臓がん患者の尿のかぎ分けができることが分かったことから、今後はあらゆるがん種のかぎ分けが期待される。
●ただし、同じにおいでも強すぎるのは苦手。検査に使う尿はほどよく薄める必要あり。
●雌雄同体なので、かけ合わせは不要。増やしやすい!
●冷凍保存可。半永久的に株を保持できる。
●検査のお役目に臨む際には、体を洗う。いわば禊(みそぎ)。大好物の大腸菌を洗い流しておかないと、尿の中に含まれるがんのにおいに反応してくれない。
 生き物ゆえに、安定した働きをしてもらうには、体調管理や環境整備が重要だ。機械化は、作業のスピード化よりも、人間の手技の再現が求められ、開発チームを大いに悩ませた。
こうして「N-NOSE」は、生物の能力でがんを見つけ出し、従来の検査法にはない、次のようなメリットを発揮するに至った。
 
 (1)苦痛がない→検査に必要な尿の量はたったの1滴。
(2)簡便→尿の採取には特別な条件を定めていない。たとえば前日の食事制限なども不要。
(3)早い→2021年9月時点で、年間120万件の解析が可能。
(4)安価→人件費以外に必要なのは寒天と大腸菌だけ。PET-CTなどの医療機器と比べ、断然安い(1万2500円〈税込み〉)。
(5)全身網羅的に、さまざまながんを一度で検出できる→がんスクリーニングに適している。
 現在、線虫が反応することが分かっているがんは15種類(胃、大腸、肺、乳、膵臓、肝臓、前立腺、子宮、食道、胆のう、胆管、腎、ぼうこう、卵巣、口腔・咽頭)だ。線虫検査では、早期がんでも検出できるため、ステージ0、1のがん患者の尿にも反応する。また、がんの有無に関する診断の精度は86%※と高い。従来の腫瘍マーカーは早期のがんに対する感度が低かった(進行がんにならないと見つけられない)が、「N-NOSE」は早期がんでも高感度である。
※日本がん予防学会(2019 年6月)、日本人間ドック学会(2019 年7月)、日本がん検診・診断学会(2019 年8月)で発表のデータを集計。
 
● 「ハイリスク」で直ちに 病院を受診し、助かった人も
 
 公益財団法人日本対がん協会によると、新型コロナウイルス感染症の流行で2020年(1~12月)のがん検診受診者数は、対前年比30.5%の大幅減となっている。広津氏はこうした状況について「今後、本来助かるべきだったがんが末期の状態で見つかることが増えるのではないか」と懸念を示した上で、次のように語った。
 
 「『N-NOSE』は尿で検査できるので医療機関に行く必要がなく、医療機関に負担をかけない形でサービスが提供できます。昨年末に開始して以来、検査の受診者は10万人を超えました。自宅で採尿して回収拠点に提出する『Go To N-NOSE』や全国10カ所の『N-NOSEステーション』、検体集荷サービスなど物流網の整備を終えたので、今後は医療機関への導入も進めていきます」
 
多くの場合、新しいタイプの検査は、3年ぐらいかけてようやく1万人に達する。1年もかからずに10万人を超えたということは、やはり需要があるということだろう。この先、医療機関でN-NOSEが受けられるようになれば、がんがあることが分かった際の治療への移行もスムーズになる。助かる生命は飛躍的に増えるはずだ。
 
 「現在運用されているのはがんの一次スクリーニング検査ですが、今後はがん種特定検査の開発を目指します。特定のがん種のにおいに反応しない線虫を作製し、特に予後が良くない膵臓がんに特化して研究・開発を進めています。今年中には最新の研究結果を発表します」(広津氏)
 
 昨年7月、筆者は自宅に検査キットを送ってもらい、N-NOSE検査を体験した。説明書に従って同封の容器に尿を入れて送るだけ。「ハイリスク」の判定が出たら、直ちにがん専門病院でがん検診を受けると決め、ドキドキしながら待っていたが、約1カ月後(サービスの運用が本格化した現在はもっと早いだろう)に届いた通知は「ローリスク」。ホッと胸をなで下ろした。
 
 一方、昨年12月末にこの検査を受けた40代の男性は、「ハイリスク」の結果を受けて病院を受診。父親を大腸がんで亡くしていたため、直ちに「大腸」を内視鏡で見てもらったところ、「1cmほどの腫瘍が見つかり、その場で切除して事なきを得た」という。術後に再度受けた同検査の結果は「ローリスク」。男性の腫瘍を切除した医師は「N-NOSE検査の存在は知っていたけど、まさか本当にがんの存在を的中させるとは」と驚いていたらしい。
 「尿1滴」や「血液1滴」で「がんが分かる」と宣伝している民間の「がん検査」には、「体内にがんがあるリスク」ではなく、「将来、がんにかかるかもしれないリスク」を判定するだけの占いレベルのものが多く存在する。テレビや雑誌などで大々的に報道された検査でさえ、偽医療が混ざっているので注意が必要だが(参照『「線虫がん検査」のニセモノ横行に開発者が警告、インチキ医療の見破り方』)、その点、N-NOSE検査はがんの有無に焦点を当てており、医学的な研究に裏打ちされているため信頼できる。
 
 最もやっかいながんである膵臓がんを皮切りに、がんの早期発見が一気に進めば、多くのがんは近い将来、日帰りで治療できる病気になるだろう。
木原洋美
 
 
 
  ③
 
 
 コロナで糖尿病を発症
 
 
 
 コロナで糖尿病を発症、米で年10万人、膵臓に深刻な被害の恐れも
 
2021年5月29日、ポルトガルリスボンにあるスクリーニング検査所で、糖尿病の可能性を調べるために血糖値を測定する医学生。(PHOTOGRAPH BY HORACIO VILLALOBOS, CORBIS VIA GETTY IMAGES)
 米スタンフォード大学微生物学者であるピーター・ジャクソン教授のところには、新型コロナウイルス感染症から回復した後、別の問題に悩み始めた人たちから毎日のようにメールが寄せられている。
 
ギャラリー:人類が地球を変えてしまったと感じる空からの絶景 23点
 
 つい先日来たメールでは、2人の子どもを持つ30代の母親が、今では日々、糖尿病の薬を何種類も服用していると訴えていた。新型コロナウイルスに感染する前には、糖尿病のリスクはなかったにもかかわらずだ。
 
 パンデミック(世界的大流行)の当初から、糖尿病(インスリンの分泌や作用が十分でないために、血糖値の上昇を適切に抑えられなくなる病気)は新型コロナが重症化するリスク要因であることが知られていた。しかし、その逆もまたありえるのではないかとの懸念も以前から存在した。ジャクソン氏は5月18日付けの学術誌「Cell Metabolism」に、新型コロナウイルスインスリンを産生する膵臓(すいぞう)の細胞に感染し、さらには破壊する可能性があることを示す研究結果を発表した。つまり、新型コロナウイルスが糖尿病の原因になりえるということだ。
 
「これは現実に起きていることです」。氏のもとに殺到している新たに糖尿病と診断された人たちからの訴えについて、ジャクソン氏はそう述べている。そうした例はまれであると主張する専門家もいるが、データによると、2020年には10万人もの人々が予期せず糖尿病と診断されていると、ジャクソン氏は言う。
 
 ジャクソン氏はまた、このウイルスがひそかに膵臓を傷つけることにより、将来的に膵臓を含めた消化器系に深刻な問題を引き起こすおそれを懸念している。
 
「これはパンデミックの中のパンデミックになる可能性があります」。イタリア、ミラノ大学内分泌学教授、米ハーバード大学医学部講師で、新型コロナ感染症と糖尿病との関連性をいち早く研究してきたパオロ・フィオリーナ氏はそう述べている。
 
 新型コロナ感染症が長期的に膵臓にとってどれほど深刻な脅威となるのか、また、糖尿病を発症した人たちがほんとうにこの病気と一生付き合うことになるのかについては、まだ詳しい調査が進められている最中だ。これらの疑問の答えを出すには、何年もかけて大規模な研究を行わなければならないかもしれないが、その取り組みはすでに始まっている。
膵臓に感染する新型コロナウイルス
 まずは、消化器系において重要な役割を果たしている膵臓についておさらいしておこう。膵臓は胃の後ろにあり、小腸につながっていて、消化しきれていない食べ物をさらに分解するためのさまざまな液体を分泌する。
 
 食物の多くは分解されて糖になり、血液中に放出される。膵臓はその血糖のレベルを調整する役割を担っており、血糖値を下げるインスリン、血糖値を上げるグルカゴンというホルモンを分泌する。しかし、この血糖値のバランスがきちんと調整されずに高血糖状態が続くと、臓器は機能不全に陥り、網膜、腎臓、神経、心臓、血管などの恒久的な損傷につながる。
 
 パンデミック初期に大量の感染者を出したイタリアでは、新型コロナ感染症で入院した人たちの血糖値が異常に高いことが明らかになった。ミラノにある病院の内分泌科の責任者を務めていたフィオリーナ氏がこの現象に注目したのは、2020年4月のことだ。当時、市内では日々2万人の新規感染者が発生し、葬儀が絶え間なく行われていた。
 
 ある日、フィオリーナ氏は、亡くなった患者の多くが高血糖なのは奇妙だという病理医の発言を耳にした。この事実は、多くの患者で膵臓がきちんと機能していないことを示している。そのとき「糖尿病の人たちの死亡リスクが高いことは確かだが、もしかしたらほかにも何かあるのかもしれない」と、フィオリーナ氏は言ったという。
 
 フィオリーナ氏は詳しい調査を行うことを決めた。2021年5月、氏は糖尿病の既往歴のない患者551人のうち、46%が新たに高血糖症を発症したという研究結果を学術誌「nature metabolism」に5月25日付けで発表した。新型コロナ感染症は、これらの患者のホルモン分泌を完全に阻害していた。感染前には正常だったにもかかわらず、インスリンの作用が低下したことで、彼らの血糖値は危険なほど高くなっていた。
 
 同じころ、新型コロナ感染症で死亡した患者の検死解剖でも、ウイルスが膵臓に感染していたことが確認され、先に述べたように一連の論文が「Cell Metabolism」誌に発表された。同チームに参加していたジャクソン氏は、新型コロナウイルスインスリンを産生するベータ細胞に感染して殺すことを発見した。ベータ細胞は容易には補充されず、失うと糖尿病にかかりやすくなると考えられている。
 
 この時点では、ウイルスがどのように膵臓に到達して細胞を殺すのかについては明らかになっていなかった。フィオリーナ氏によると、まだ発表されていない氏の最新の研究では、この疑問に答えることを目指しているという。フィオリーナ氏のデータは、新型コロナウイルス膵臓のリンパ節で検出されることを示しており、ウイルスが直接リンパ系や血流を介して到達している可能性を示唆している。
 
 もしこれが確認されれば、ウイルスは膵臓に直接感染することになる。しかしその一方で、新型コロナウイルスは間接的な方法でも膵臓に害を及ぼしていると、フィオリーナ氏は言う。
 
 新型コロナ感染症に対する防御を開始した免疫系は、ときに過剰に反応して無差別攻撃を行い、全身に炎症を引き起こす場合がある。これが膵臓に負担をかけ、血糖値を上昇させる。さらには、その炎症反応を抑えるステロイド剤が事態を悪化させることもある。
 
 米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのキャスリーン・ワイン氏によると、ホルモン分泌が正常で糖尿病のリスク因子を持たない人たちであれば、ステロイド剤を使っても問題はない。しかし、すでに糖尿病にかかりやすい状態にある人たちの場合、ステロイド剤が体にインスリンを大量に作らせるせいで、細胞がインスリンに反応しにくくなり、結果的に血糖値を上昇させてしまうことがあるという。
 
健康への長期的な影響は
 新型コロナ感染症からの回復後、膵臓が長期的にどのような運命をたどるのかを完全に理解するには、もっと多くの時間が必要だ。しかしフィオリーナ氏が5月に発表した研究は、新たに高血糖症になった人の3人に1人では、少なくとも6カ月間はその状態が維持されていることを示している。
 
 ジャクソン氏によると、これは年間の糖尿病予想発症数をはるかに上回っており、またその数は「氷山の一角に過ぎない」という。
 
「危機感を煽りたいわけではありませんが、今後予想以上に膵臓への長期的な影響が出てくるかもしれません」とジャクソン氏は言う。新型コロナ感染症感染から数カ月がたった時点で糖尿病を発症していなくとも、将来的にはそうなる可能性があると氏は指摘する。
 糖尿病のような、血糖値を注意深く監視し、定期的にインスリンを注射しなければならない慢性疾患を発症するだけでも厄介だが、新型コロナウイルス膵臓をひそかに傷つけて健康に害を及ぼす可能性もある。
 
 ジャクソン氏はこれを火事になった家にたとえて、燃え上がる家具にばかり注目していると、煙や熱が家の構造に与えているダメージに気づかないことがあると述べている。ウイルスは膵臓の組織に傷をつけ、それによって膵炎(膵臓の慢性的な炎症)などの合併症や、膵臓がんすら起こりやすくなるかもしれない。
 
「火事にあった家の壁が、すぐにでも新しいしっくいを塗れるようなきれいな状態ではないのと同じです。臓器の構造は傷つき、問題を抱えています。でこぼこの壁から始めるのですから、修復は難しくなります」
 
 膵臓へのダメージはまた、糖尿病による長期的な合併症が起こりやすい胆管や腎臓など、周辺にも影響を及ぼす可能性がある。米メイヨークリニックによると、糖尿病患者の約4人に1人は、血液中の老廃物をろ過する血管の損傷により、最終的に腎臓病を発症するという。
 しかし、一般の人々がそうした合併症についてどの程度懸念する必要があるかについては、まだ議論が続いている。
 
ウイルスは糖尿病の原因なのか、分かれる見解
 膵臓と新型コロナ感染症の関係について、科学者たちは2つの陣営に分かれている。ワイン氏は、この病気がほんとうに糖尿病を引き起こすかどうかは疑わしいと考える側にいる。
 その理由は、実際に多くの人たちが、新型コロナ感染症の急性期後に回復しているからだ。ワイン氏がウェクスナー医療センターで診た患者の多くは、退院後間もなくインスリンの投与をやめることができた。ワイン氏はまた、同院ではパンデミックの最中に、主に自己免疫反応がベータ細胞を攻撃して起こる1型糖尿病の新規診断数は増えておらず、ベータ細胞が大量に死滅したという証拠も観察されていないと述べている。
 
「ほんとうに明らかにすべき問題は、炎症反応が収まり、ステロイド剤を使わなくなったときに、何が起こるのかということでしょう」とワイン氏は言う。「糖尿病が継続するなら、もしかするとその人はいずれにしろ糖尿病になる一歩手前だったのかもしれません」
 感染後に糖尿病を発症する人は、もともとそうなるリスクを持っており、新型コロナ感染症によって体にかかった負担によって単にそれが加速されたのだろうと、ワイン氏は言う。それが慢性的な糖尿病になる場合もあれば、一時的なもので収まることもある。たとえばそれは、妊娠中に発症して産後に治る妊娠糖尿病のようなものだ。
 
 パンデミックが糖尿病と診断される割合に影響を与えたかどうかについて、科学者が人口データから判断できるようになるには何十年もかかるだろうと、ワイン氏は指摘する。
 一方で、新型コロナが糖尿病を引き起こすという陣営にいる研究者らもまた、新たに糖尿病と診断された人たちの中には、すでにその傾向を持っていた人が含まれている可能性を認めている。時間がたてば高血糖が解消される患者がいるだろうとも予測する。しかし、それ以上のことが言えるデータも存在しないと、彼らは主張する。今回のパンデミックは、長年にわたって研究者たちを悩ませてきた「ウイルスは糖尿病を引き起こすのか」という問題の答えを見つける絶好の機会ともなっている。
 
結束して糖尿病の謎に挑む研究者たち
 科学者たちは長年にわたり、1型糖尿病感染症によって引き起こされるという仮説を立ててきた。たとえば免疫系が甲状腺を攻撃する橋本病や、免疫系が全身の健康な組織を攻撃する狼瘡(ろうそう)といった自己免疫疾患もまた、ウイルスによって引き起こされると疑われている。
 
 しかし、こうした仮説を証明するだけの十分な証拠はこれまで見つかっていない。過去のSARSやMERSの流行後にも糖尿病と診断された人たちはいたが、非常にまれなケースだったため、なんらかの結論を出すには至らなかった。新型コロナ感染症の場合には、はるかに多くの人が感染したことにより、データの収集が現実的に可能になったと、英ロンドン大学キングス・カレッジの代謝・肥満外科学教授のフランチェスコ・ルビノ氏は言う。
 
 2020年8月、ルビノ氏をはじめとする主要な糖尿病研究者らは、新型コロナ感染症に関連する糖尿病患者の登録を世界的に開始し、ついにそうした情報を集める段階にこぎつけた。
「新型コロナが実際に糖尿病を引き起こすことがある程度の確信をもって証明されれば、それが糖尿病の背後にウイルスのメカニズムがあるという概念の証拠となります」とルビノ氏は言う。
 
 ルビノ氏によると、登録者数は最終的に620件を超えたという。これだけのサンプルがあればデータの分析を開始するには十分だと、研究チームは判断した。登録患者の中には、時間の経過とともに高血糖症が解消される者もいることが予想される。
 
 それでも研究チームは、ほんとうに糖尿病を患っている人たちの中に、何らかのパターンがあるかどうかを探っていく。最終的には、新たなタイプの糖尿病が発見されることもあるかもしれないと、ルビノ氏は述べている。
 
「これほど多くの研究者がこの研究に携わっている理由は、新型コロナ感染症についてだけでなく、糖尿病についても広く情報が得られる可能性があるからです」とルビノ氏は言う。「もしこのウイルスがほんとうに単独で、何もないところから糖尿病を引き起こすことがわかったなら、糖尿病についての常識を見直す必要が出てくるかもしれません。それは非常に重要な発見になります」
 
 新型コロナ感染後の糖尿病がどんなメカニズムで起こるにせよ、感染歴のある人たちにはぜひとも、糖尿病は多くの場合ひっそりと発症すること、そして深刻な合併症を引き起こす可能性があることを覚えておいてほしいと、ルビノ氏は指摘しする。そして、疲労感、頻尿、不可解な喉の渇きなどの初期症状に注意して、すみやかに治療を受けるよう勧めている。
 
「新型コロナに罹患した大多数の人には、問題は起こらないだろうと思われます。しかし、早く気がつくことができればそれに越したことはありません」
 
 
 長くなりました。明日も長くなる予定ですが悪しからず・・・
 
 先週から東京競馬が開催されています。当方は、もう数か月間、馬券は
購入していませんが、多少はテレビ観戦やら予想やらはしています。
それでもやはり競馬は馬券を買って初めて楽しめるものですから
数日前にネット注文口座に1万円だけ入金しておきました。とりあえずは
本日の土曜日のメインレース(11R)だけ少しやってみます。
 秋の競馬はG1レースが連続します。11月いっぱいは東京と阪神競馬場
での大レースの開催は年で一番の楽しみにしている人が大勢います。
 当方も何とかこの時期に資金を増やして暮れの有馬記念で大勝負・・・と、
行きたいものです。
 
 
 五木先生とか量子物理学は明日以降に先送りします。添付はやや小出しにする
つもりです。
 
 
       では、また明日・・・・・